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 未分類:0 放置プレイ中:3 オリジナル:7 マリア様がみてる:7 リリカルなのは:5
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雨降って    2008 / 02 / 11 ( Mon )
正直微妙な出来。志摩乃梨。
君のみや花の色にも立ちかへで袂の露は同じ秋なる


 はらりはらりと紅葉が焼けた畳へと舞い堕ちる。
僅かに開いた障子窓から、涼やかな秋の香が香った。
斜に差す障子に畳は白く切り取られ、その碁盤のような模様を克明に映し取る。
其の上に又一枚、木の葉が落ちた。
志摩子は袂をおさえ、それに手を伸ばすも乾いた葉ははらはらと崩れ、膝元に引き寄せた掌に残るはその残滓のみ。
志摩子はそっと、その掌の上に残骸をのせたまま窓から手を伸ばし、秋風に流した。
 最後まで目で追っていたかったのだけれども他の木の葉に紛れ、瞬く間もなく見失ってしまった。
さしても無いことではあるけれど
何となく、泣きたくなった。



 驟雨




 漸く気付いて顔を上げると、面々がこちらに訝しむような視線を注いでいる。
志摩子は、はたと目を見張ると曖昧模糊な微笑を浮かべた。
「ごめんなさい、ぼうとしてしまって。」
 薔薇の館の会議中、居眠りをしてしまったらしい。
志摩子は、潮が引くように頭が冴えて行くにつれ、恥ずかしさがこみ上げた。
「お姉様、最近ちゃんと御休みになっていないんですか?」
 乃梨子が心配げに眉根を寄せる。
「いいえ、大丈夫よ。有り難う」
 本当に何でもないことなのに、心配をかけさせてしまってはいけない。
志摩子は努めて何でも無いように目の前の書類に手を伸ばした。
「本当に大丈夫なの?」
 机を挟んだ祥子さまが、窺うように訊く。其の隣では、祐巳さんがころころと表情を変えている。
「無理しなくていいから」
 それを追うように、令さまが言った。
「志摩子さんって知らないうちに根を詰めるようなとこあるからね」
 由乃さんが快活に微笑んだ。
薔薇の館に、穏やかな空気が流れ始める。
 志摩子はその雰囲気に、知らず笑みをこぼした。






 台風の去った空は秋晴れが続いた。
 並木道を歩みながら、志摩子はふと思いを馳せる。
どんなに高く舞っても枯れ葉は堕ちるばかりで何処か物悲しい。
葉はいつでも堕ちるしかなくて、花弁も降り注ぐより他に選択肢は無く。
 自分も、乃梨子の中でいつかは堕ちて行ってしまうのだろう。
足下の枯れ葉がかさりと囁いた。
今は、そんなことはきっと無い。志摩子は乃梨子の笑顔を思い浮かべる。
だけれど、いつかは褪せてしまう物なのではないだろうか。
幼き日に親しんだ玩具もいつの間にか手から離れ、それが当たり前のこととなっている。
そんな日が、いつかは来るのだろう。分かってはいるけれど、急き立てる寂寥感は拭えない。
脚が重かった。普段使っている鞄だけれど、此れはこんなにも重かったのだろうか。普段気にも留めないことが志摩子を追いやるように、次々と責めたてる。
「志摩子さん!」
 其の声に、志摩子が顔を向けると走り寄る乃梨子の姿が目に映った。
「今日は山百合会の仕事って無いんだよね?一緒に帰ろ」
近寄り脚を止めた彼女は肩で息をしていた。大分走ったのかもしれない。志摩子が気遣うように声をかけようと口を開くが、それを遮るように乃梨子がそう言った。
「クラスのことは良いの?」
 今朝方、帰りが遅れそうだから先にと乃梨子が言っていたことを思い出す。
「うん、何か思ったよりも早く終わっちゃった。」
 乃梨子が嬉しそうに笑いかける。
実際に嬉しいのだろう。それくらいは自惚れても良いと志摩子は思う。
「そう、良かったわ」
 丁度、マリア像の前まで来ていたので其処で立ち止まりマリア様に向き直る。
手を合わせながら、志摩子は胸の内で呟く。
  何時もいる筈の乃梨子がいなかったからあんな気分になったのかしら。
 直ぐ後に、そうかも知れないと納得するような気がした。
彼女が傍にいることにこんなにも安心感を抱いているのだから。
志摩子は思考を取り払うと、今日もマリア様に祈った。



  心の雨は降り続いたまま。
夏の空に、置き忘れてきたのだろうか。

「志摩子さん、何かあったの?」
 同じクラスの桂さんが尋ねた。
彼女が人の機微に敏感であることは、他の人から伝え聞いてはいたけれど。
いざ、自分に言い当てられると心の内を覗かれたようでどきりとする。
「いいえ、何でも無いの」
 志摩子は、心配を掛けまいと自然な様子で微笑んだ。
桂さんは一瞬だけ困惑したように顔を強張らせ、間髪入れずに綻ばせる。 
「そっか。最近冷えるからね。風邪でも引いたなら早めに休んだ方が良いよ」
 彼女は、きっと自分が訊いて欲しく無いと思っているであろうことを察したのだろう。志摩子は友人に心の内で小さく詫び、感謝の意を込めた謝辞を口にすると席を立つ。
 友人の気遣わしげな視線を背中に微かに感じた。
 教室を出、後ろ手に扉を閉めると細々と溜め息をついた。





 葉をかき分け、銀杏を袋につめる。
  一つ、又一つ。
 はじめは少なくとも、徐々に膨らむ袋に志摩子は充足感を覚えた。
食べることも大切ではあるけれど、やはり其の過程も大切だと思う。
  一つ、又一つと銀杏の実が地面から攫われてゆく。攫われて、食べられてしまう身としては自分は怪物のような物なのだろうか。
そんなことを考えながら、心を弾ませながら、又銀杏を拾う。
 不意に志摩子は其の手を留める。
地面にこすりつけられるように踏まれた実があった。
ふっと、心に翳りが差す。
此れを踏んだであろう人に罪は無い。恐らく他意も無く、不注意だったのだろう。
志摩子は、留めていた手に気付くと意識的に手を伸ばした。
 一つ、又一つ。
 空は未だ、志摩子の翳りを濃くするかのように澄んだ色をしていた。

 
 

    *




 佃煮へと付けようとしていた箸は、触れること無く止まった。
志摩子は箸を置くと、音も無く息をついた。
「志摩子さん、食欲無いの?」
 乃梨子が首を傾ける。
「・・・そうではないわ」 
 志摩子は自分の弁当箱を見詰めたまま、俯きがちに緩くかぶりを振った。




 志摩子はベンチに腰掛けた。
手を持ち上げ、腕時計を確認したけれど然程針は動いていない。
一抹の風になびく髪をおさえ、志摩子は意味も無く駅の時計を見上げた。
それは先程見た針と寸分違わない傾きを示しており、志摩子はなんとはなしに溜め息をついた。
このところ、溜め息しか着いていないのではないかと思える程自然にそれは口をつく。
目の前を通り過ぎる雑踏にそこはかとなく疲れを覚え、思わず出そうになった溜め息をこらえた。
こんな体たらくでは人に心配されても仕様が無い。意識して、背もたれに掛かっていた背をぴんと伸ばした。
腕時計を見る。未だ約束の時間までにはかなりの余裕がある。何故こんなにも早くに来てしまったのだろうか。
乗った電車を一つ遅れさせても十二分に間に合った。志摩子は自分の早計さに又溜め息をついた。





「何か嫌なことでもあったの?」
 次いで乃梨子も箸を置いた。
数分前まで午前中に拝観した寺の話をしていたというのに、自分の所為で中断してしまったかと思うと情けなさに俯いた顔を上げることが出来なかった。
「・・・そうではないの」
 志摩子は繰り返えす。
乃梨子が、困惑も心配も混ぜ合わせたような感情も露に、横に座っているのが分かる。
志摩子は、ふと並木道を思い出した。
「枯れ葉は、どうして落ちてしまうのかしら。」
 ぽつりと落とされた言葉に、乃梨子は一瞬きょとんとしたような気がした。
何時も見ている顔が、不思議そうに瞬くのが目に浮かぶ。 



 乃梨子が来たのはその十分後ではあるけれど、その時間は果てしない時間に感じた。
乃梨子が照れたように笑う。
「志摩子さんより早くに来ようと思っていたんだけど」
 十分後と言っても約束の時間より15分も早いと言う、似た者姉妹だった。



 「枯れ葉ってさ、落ちる前は日光を浴びて葉緑体が光合成をして空気を清浄しながら木の養分をつくるけど。」
 乃梨子は暫くの間を置いてからゆっくりとした口調で言った。 
「落ちたら落ちたで土の栄養になって芽を出して、また木が葉っぱを茂らせて、そうして巡回しているからじゃないかな。
考えてみれば単純なことだけどさ。私たちにとっては大切な物なんだよね。どんなことでも無駄なことなんて無いし、必要不可欠何だと思う。
何時か、どんな大変なことがあっても私たち今を振り返れるときがくるんだから。」





 「ちょっと早いけど行こっか、志摩子さん。ほら、丁度バスが来たよ。」
 手を引く乃梨子の手は、少し冷たかったけれどとても暖かく感じた。
 
 晴れ渡った空は変わりなく私たちを見下ろしていた。












 独り言:秋の話のくせに何故驟雨(しゅうう)なのかと言うと、な(略
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