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在る夢の話    2008 / 08 / 21 ( Thu )
 昔書いた見直しなしの一発書き。
なにやら気に入って下さっていた方がいらっしゃいましたので再掲載。

続き書きたいなぁ。
でも最近まともに書いてないので自信が無いです。
絵も文も普段から書かないといけないなと思います。
 海に臨む小高い丘に建つ三階建ての第一棟校舎の中央を貫くこの空間は、本来時計塔であったと聞いていた。外観からでは、時計塔を支えるように校舎が設けられたような状態だ。この元時計塔は実質四階程の高さがあり、校舎から頭ひとつ突き出ている。

 この学校に入った理由は、この広大な図書館と言って良いだろう。



                       或る夢の話



 天井に煌めく豪奢なステンドグラスが床に広大な光の影を落とし、正面の壁に聳える巨大なメトロノームのような振り子がその影を僅かに揺らめかせている。

その振り子の音を聞きながら、心音のように繊細なリズムを崩さないように靴音を響かせながらゆっくりと階段を上る。

  かちり、かちり、かちり。 



 最初は煩いと思っていたこの音も、慣れてみると不思議と心地良い。

その音は絶える事無く隅々まで響き渡り、文字に埋もれ時を忘れる事を諌めているようでも、逆に瞑想に誘うようでもあった。

 そんな人間を勾引す振り子を正面に、左右には壁を刳り貫いたかのような書架が見上げても尚余る程高く、天井近くまで屹立している。

この図書館に書架はこの二つしか存在しない。

階数の存在を意識させるかのように、書架の前には渡り廊下と橋を複合させたかのような造りの通路がある。目算で幅2m程のシック(chic)な木造の通路だ。そこへたどり着く為にそれぞれ階段がのびており、傍から見ればエスカレーターの断面図のように階毎入れ違いになっている。2階、3階といくと、左右それぞれの書架へ移動が容易くなるよう、通路に橋が架かっている。通路の所々には、古めかしくも味のある木造の踏み台が置かれており、階段状のそれは高い位置の書物を取る為だろう。それぞれ適切な距離をもち必要な数だけ置かれているように見えた。

創造的でありながら、利便性を備えたこの造りは一体誰の作なのか。

 頭の中で厳粛な重みを有すその本を紐解く。古い本の香りが甦る。

創立者は何処か、別の国の生まれらしい。詳細は書かれてはいなかったが海から降り立ち初めて踏みしめたこの土地にこの時計塔を建てようと試みたらしい。その恩恵か、教室の窓からは潮の香りを孕んだ風と、限りないく青い海原が運ばれてくる。

その割には、この時計台は潮騒とともに来す湿気の香りがしない。

 頭の中の書物の黄ばんだページを破かぬよう、丁寧に繰る。

この時計台の設計は、現代でも難しい程に密閉されているのだという。正面のステンドグラスに展示された芸術品のように挟まれ、錆び付く事を知らない久遠の時を刻むメトロノームは、機械仕掛けの螺子の一本さえまさに芸術品のようであった。

「君は“かぎあなの秘密”という本を読んだ事があるかい?」

 その老人は何の前触れも無く背後に立っていた。

その日も丁度、燦々と降る天のステンドグラスの鮮やかさを浴び正面のメトロノームに耳を澄ませ、連なる書物に秘めやかな高揚を抱いていたそんな時だった。

今から丁度1ヶ月程前の事。

「ロアルド・ダールの“チョコレート工場の秘密”ではないぞ、“かぎあな”だ」

 老人はおどけたように付けなくても良い忠告を付け加えた。口元の白く蓄えられ

た髭が合わせて揺れる。何となく周りを見渡すが他に人の気配はない。話しかけられているのは自分で間違いが無いようだった。

「・・・ええ、まあ」

 小学生の頃に一度市立図書館で借りた記憶がある。鍵穴の中に、少年と青い鳥が描かれた表紙の児童文学だ。

 答えると同時に、老人は皺にまみれた瞳を見開き燦然と輝かせた。

「どうだ、あの小説は最高のジュブナイル小説だと思うのだがね。ウラジスラフ・P・クラピーヴィンを私は讃えたい」

 そういえば、そんな名前の作者だった気がする。名前の印象からではロシア圏内の作家なのだろうか。当時はそんな事は気にもとめてはいなかったが。

「しかしだ」

 煌めいていた瞳を伏せるように、老人は唐突に肩を落とす。

「あの本はもう絶版になっておっての。私はもう一度手に取ろうと思ったのだがこの蔵書の数だ、探そうと思ってもこの老躯では見つかるまい。そこでだ」

 不意に頭痛がした。

「若い者に探してもらおうと思ってな。幸い、君は彼の本の装丁も見た目も知っているようだ」

 何故嫌な予感というものはこうも当たってしまうだろうか。







 どちらにしても、ここに通い詰めたであろうことは自明の理ではあるので私用ついでにと思い直した。

どうせ、そう急いだ所で直ぐに見付かる事は無いだろう。

「・・・あった」

 思わずそう呟いたのはその翌日の事で、余りのあっけなさに正直面食らったのは仕方の無い事だろう。驚きのあまり、何度も表紙と背表紙を眺めた。それを見付けたのは3階の少し上の辺りの、ステンドグラスが間近に迫りその圧倒的な大きさを改めて実感する場所だった。ここまで上るのには多少骨が折れるが、それだけの価値がある。そこに並ぶ手に持つ事さえ困難と思われるような書籍の狭間に、その本はあった。余りの巧妙な隠れ家につい見逃してしまいそうな場所だった。暫く立ち尽くしていたようで漸く手の中の重みに思い至り、心なし慎重な手つきでページを繰る。所々、記憶と重なる文面を追いながら懐かしさに耽っていると、始業の鐘が鳴った。時計台内部という事もあり、この広大な空間にもその音は良く響く。

慌ててその本を書架へと戻す。そこが在るべき場所のように思えたからだ。

 見付けてからというもの、それとなく老人の姿を探してはみたが何処にも見当たる事は無かった。恐らくは教職員か何かなのだろうが、積極的に探そうと思える程熱心ではなかったので何時かあった時に教えようと結論づけた。

 それから毎日のようにここへと上り、この本の存在を確認するのが日課となった。

 漸く3階の踊り場へと出た。黒みを帯びた古めかしい木造の手摺に軽く手を添え、少し目線を上げると、色鮮やかな光をうける通路が続いている。

踏み出すと軽い靴音が響いた。余程しっかりと組まれているのか、木造のそれは全く軋む様子はない。

 迷う事無くその本を手に取り、慣れた手つきで本を開く。

   ふわり。

唐突に目の前に金色の二対の羽が迫り、その眩しさと近さに思わず息をのみ、目を閉じた。

暫時の間を刻んでも顔に何も触れる気配がなく、目を開けるがそこには羽等存在しうる筈も無く、開いたままの本が所在なく手に収まっていた。

「・・・本?」

 確かにそれは本ではあるが、しかしその中に見知った文面はなく、ページが刳り貫かれたようにごっそりと無くなっており換わりに小さな手帳のような本が収まっていた。表紙には、“Key” とだけ書かれている。

興味を引かれ、それを取り出し“かぎあなの秘密”を元の場所へと戻した。

書架に寄りかかりそのページを開く。それは、いかにも子供向けといった趣向の絵本であった。

「そこで何をしている」

 横合いから入る明らかな怒気を含んだ声に一瞬身を竦ませた。

目をやれば、先程自分が上った階段から今しがた身を現した壮年の厳格な顔つきの男が立っていた。顔半分が影になっており、表情が窺い難い。

厳かに廊下を踏みしめこちらに威圧感を与えんとしている様子に、数日前の友人の言葉を思い出す。この学校の教頭だ。あそこまで嫌われている職員も珍しいと、記憶の端に留めていたようだ。

「何をしていると訊いているのだ」

 無駄に威圧的な態度。思わず成程と頷きたくなる。

「本を見ています」

 昔から、“優等生”である自分には自信があった。そもそも何も後ろ暗いこと等無い。

その自負から正面から教頭を見遣る。

「ふん、ここには学術書しか無いぞ」

 ちらりと書棚に目を遣る。確かに、ここには洋書の医学書や日本語であっても専門用語が惜しげも無く溢れんばかりに使われていそうな心理学、哲学書など、一介の学生が読み取れるとは思えない物ばかりだ。

「ええ。ここはステンドグラスが綺麗でしょう?思わず見惚れてここまで上って来てしまったのですが、ついでにどんな本があるものかと。仰るように、難解な物ばかりで僕にはさっぱりでしたけれど」

 屈託なく頬に笑みをのせてみたが、教頭はそれを鼻先で笑った。

「まあ良い。何をしていようと、いずれはぼろを出す事になるのだからな」

 疑心暗鬼を生ず。

 内心でそう呟くと、教頭と入れ違うようにそこを後にした。軽く会釈し、階段を下りようと脚を掛けるのとその声が掛かるのはほぼ同時と言って良い。

「“鍵”はどうした」

「・・・何の事でしょう?」

 咄嗟の事とはいえ、声が裏返らなかった事に感謝する。

意識的に呼吸を押さえようと試みる。

「恍けるな」

 平静を装い、振り返ると教頭の無骨な手の中に“かぎあなの秘密”があることをはっきりと見て取った。あれは教頭の物だったのか。背に汗が滴るのを感じながら素早く頭を巡らせる。これを、奴に渡すべきだろうか。

「恍ける、と仰られましても」

 困った様子をしながら、内心は別の事に困惑していた。

根拠も無い警戒信号が頭痛がする程の強さで早鐘のように耳の奥で鳴り響く。

「ならばその持っている物を渡しなさい。」

 語調を強め、有無をいわせぬ口調で言い放つ。

 観念したように、しかし不自然にならないような足取りでもと来た道を引き返す。

手に薄く汗をかいていた。それを気取られないよう、掌を僅かに伏せながら本を差し出す。

「・・・行け。授業が始まる」

 始業までは未だ十分な時間があるが無理に反発しようとはせず、失礼しますとだけ告げて再び階段へと舞い戻った。

去り際に一度だけ振り返ると、手渡した、すれ違った際に密かに本棚から抜き取っておいた本を手に佇む教頭の姿があった。

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