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 未分類:0 放置プレイ中:3 オリジナル:7 マリア様がみてる:7 リリカルなのは:5
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No title.    2008 / 02 / 11 ( Mon )
少女ブランの八系様へお誕生日祝い。

殆ど勢いで書いたSS。





 ゆっくりと唇を離すと、間近で目を見開くフェイトちゃんと目が合った。
放課後の教室で斜めに差し込んだ夕日の中、際立って赤くなる白い頬。
「にゃはは、何でもないよ」
  痛いくらいに胸が高鳴って、一瞬だけ、このまま逃げ出したくなる。
云いたいことも、伝えたいことも、何ひとつ口から出せなくて、ただ笑って誤摩化すのが精一杯だった。
フェイトちゃんは、恥ずかしそうにしたり慌てたり、くるくると表情を変えながら、最後は少し困った風に微笑んだ。
ごめんね。と心の中で呟く。
困っちゃうよね、いきなりこんなことされても。
胸が冷えた手に締め付けられ、次第に息苦しくなる。このまま夕日の中で溺れてしまうのかも知れない。
肩に添えた手を隠すようにそっと自分の背中に回した。心臓の音は伝わらなかっただろうか、震えは気付かれなかっただろうか。制服越しの柔らかな感触と温かさがまだ掌に残っているような気がして、逃がさないようにそっと握った。
「あ、う、うん。」
 顔を真っ赤にする彼女が愛しくてもう一度、唇を触れさせたい衝動に駆られた。
キスじゃなくても良い、ただ、近くで彼女の存在を感じたかった。
でも、私の手はかわらず背中で握られたままで、唇も意味のない弧を貼付けている。
触れられない、触れたら、何かが壊れてしまう。
途方もない不安や、愛しさ、苦しさが頭の中でぐちゃぐちゃとまわって、今どこにいるのかさえ分からなくなった。

「なのは」

 ゆらゆらと揺らめいていた視界が、急に鮮明になる。
沈んで溺れかけていた私の手をフェイトちゃんの声が優しく引いてくれる。
「帰ろうか」
 席から立ち上がって私を見下ろす目は優しくて、そんな顔を見ていたら自然に笑って頷くことが出来た。



 「寒いね」

暗紫色が染め始めた空を仰ぐとフェイトちゃんはスクールコートの襟元を引き寄せた。
誰もいない昇降口を抜けて、校門を通り過ぎる。
横を歩くフェイトちゃん。又背が伸びたらしく、私よりも少しだけ広い歩幅。
だけど私に合わせてゆっくりと歩いてくれる。
「なのは?」
 黙ったままの私を不審に思ったのか、足を止めると軽く身を屈めて下から顔を覗き込む。
綺麗な綺麗な長い睫毛が不思議そうに瞬いて、息が詰まった。
どうしてだろう、いつもならちゃんと笑えるのに。今日に限って、上手く出来ない。
「あ....のね、フェイトちゃん」
 苦しい。
どうしてうまくできないんだろう。
「今日は、クリスマスだね」
 やっとでた言葉を無闇に弾ませて、逆に私の心は酷く落ち込んでいく。
「そうだね、今日アリサ達がお稽古がなかったら皆でパーティできたのに」
 違う、違うの。胸に抱いた鞄を強く握る。
「明日が楽しみだな。明日は、皆時間あるんだよね?」
 今日じゃなくちゃ、きっと駄目なんだ。
今じゃなくちゃ、これは駄目になってしまう。
「フェイトちゃん」
 私の声に、なぁに、なのは、と見詰め返す赤い瞳。
何故だか急に泣きたくなって、情けなくて、俯いて。鞄が目に映る。
「これ、どうかなって思ったんだけど」
 あぁ何を言っているんだろう。渡さなくちゃと、ただそれだけが先立った。
「私に?」
 鞄から取り出した、ラッピングした紙袋。
翠屋のクリスマスケーキの包装を元に出来るだけ可愛く仕上げた。
「嬉しいな、ありがとう」
無邪気に笑うフェイトちゃんが、もう夕日とも夕闇ともつかない中でくっきりと見えた。
開けて良いかな、という彼女に頷くと丁寧に包装をといて中のものを取り出す。
その手に広がったのは赤い編み込まれた毛糸。
一ヶ月も前から用意していた、手編みのマフラー。
「綺麗だね、これ、なのはが作ったの?」
「うん。初めてだから、あんまり上手く出来なかったんだけど」
 そんなことないよ、ときらきらとした目をしてフェイトちゃんはマフラーを広げては魅入っていた。
何となく恥ずかしくて、冷えた頬がだんだんと火照り始める。
「なんだか使うのが勿体ないな」
「だ、だめだよ。ちゃんと使ってくれなくちゃ」
 言った後で又頬が火照った。押し付けたい訳じゃないのに、どうしてだめなんだろう。
「そうだね、折角なのはが作ってくれたんだもの。使わない方が勿体ないよね」
 それでも彼女は気にした様子もなく微笑んで、ふわりとその白く細い首に巻く。
「温かい」
 独り言のように呟いて、「ありがとう、なのは」ともう一度私に言った。
「良かった」
 荷がおりて、彼女が微笑んでくれて、少しだけ軽くなる。
云いたかったことも何も伝えられなかったけれど、でもこれで良かったのかもしれない。
壊してしまったら、もう築けないかもしれない思い出。
思い出す時に、辛くなってもそれでも良かった。
「........なのは」
不意に名前を呼ばれて、顔を上げると額に触れる掌の感触。
それから、柔らかいものが降ってきた。
少し触れただけですぐに離れていく。けれど、温もりはまだそこに残っていて、やっと何をされたのか分かった。
「お返しだよ」
 照れたようにはにかんで、微笑み続ける彼女。
思わぬ仕返しに、暫くその顔を見詰めることしか出来なかった。
「も、もうフェイトちゃん」
 気恥ずかしさにそう云ってはみたものの、差し出された手に逆らえず、その手を握り返した。
「帰ろ」
「うん」
 少し冷えた、温かい掌に包まれて歩く家路はイルミネーションにきらきらと光って。
見慣れていた筈なのに、いつもよりずっと輝いて見えた。
云いたいことも、伝えたかったことも何ひとつ云えず、今日もただ隣を歩くだけ。
今は、たぶんこれで良かったんだ。
その優しい唇はまだ遠いけれど、いつか、背伸びをして届くことが出来たなら。
私は、溺れることなく心地良い波を泳ぐことだろう。






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Comment
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最高です!!!もっと書いて欲しいです!!!
by: しお * 2008/02/12 09:32 * URL [ 編集] | page top↑
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>しおさん

お返事遅くなってしまい申し訳ありません;
つまらないものをお読みいただき有り難う御座います!
中々書く機会もないのですが、頑張らせて頂きます;
by: cos * 2008/02/20 20:30 * URL [ 編集] | page top↑
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