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 未分類:0 放置プレイ中:3 オリジナル:7 マリア様がみてる:7 リリカルなのは:5
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変態少女アラートフェイト 番外編    2008 / 02 / 11 ( Mon )
  あたしがフェイト執務官の見習いについてからもう半年以上が経った。
漸く仕事や自分の役割について慣れ始め、機動六課の面々と通信のやりとりも出来るようになった。
最初の頃はと云えば、新しい環境でスバルもあたしも覚えることが多すぎて、ろくに連絡も取らず疲れ果てて一日を終えることが殆どだった。
いや、正確に言えば仕事の内容は知識としては知っていた。 要はそれと実際の仕事とのギャップを埋めて行く作業の積み重ねだったのだ。頭で覚えたことを体に染み込ませる。だからこそ、余計に体力を消耗した。
そんなあたしをみて、フェイトさんも「私も最初は大変だったよ」と苦笑まじりに言った言葉に親近感を覚えたことは今も鮮明に残っている。
そんな頃のことだった。





変態少女アラートフェイト番外編    はじまります。






 「ティアナ、暫くシャーリーがいないから作業の分担、少し任せられるかな」
 フェイトさんが常のように凛とした執務官制服の姿でこちらに振り向いた。
いつかこんな風に制服を着こなしてみたいと思う、ひそかなあたしの憧れだった。
「シャーリーさん、どうかしたんですか?」
 執務官補佐の彼女はその仕事の殆どをフェイトさんの元で行っていた。
そのシャーリーさんの姿がないのは珍しい。
「うん、ちょっと、ね」
 言葉を濁すフェイトさん。そこで私は何か機密情報に関わることなのだと察した。
情報漏洩を防ぐため、重要事項は直接口頭や書類を手渡しで行うことも時にあると聞く。
「そうですか、わかりました。これを今日中に終わらせれば良いんですね?」
 あたしは深くは聞かず、ただ必要なことだけを確認した。
「うん、助かるよ」と言ったフェイトさんはほっとしたような顔をしていた。
 まだ見習いであるあたしには荷の重いことなのだろう、もしあたしが根掘り葉掘り聞いたらどう説明しようか困っていたようだ。その気遣いを無駄には出来なかった。焦っても仕方ないとわかっているつもりでも、そんな気遣いをさせてしまう未熟さが歯痒い。
一歩一歩確実に、早く一人前になってこの憧れの人と肩を並べるようになろう、そう誓った。





 いつもより一人分の席が空いた執務室で先の事件の報告書をまとめるフェイトさんの傍ら、あたしはその資料を探していた。
フェイトさんが提示したリストからデータベースに検索をかけ、該当したその膨大な情報から必要なものを抜き出していく。先週はずっと別世界での激務に飛び回っていた為、その後始末に暫くは缶詰状態が続くことだろう。今回は被害状況などはすでに別のスタッフからの報告書があるので少し手間が省けたことが救いだ。そんな中任されたシャーリーさんの仕事もそれほど多くはなく、この不在は前もって準備していたものと伺わされた。
そこまで考えて余計な詮索はするなと自らを戒める。関わるなと言外に云われていることにわざわざ首をつっこむべきではない。半人前のあたしは、出来ることをすれば良いのだ。
気持ちを切り替えようとコンソールから顔を上げる。
窓の外にミッドチルダの街並が傾いた陽に赤く沈んでいた。

「ティアナ」

 その窓に背を向けて座っていたフェイトさんが不意にだした声に、自分の心を見咎められたようでどきりとした。
けれど、フェイトさんはあたしの予想とは全く違う言葉を紡いだ。
「ティアナは………大切なものってあるかな」
 フェイトさんの表情は逆光で黒く塗りつぶされ、分からなかった。
だがその声音から、その問いの裏にとても重いものが通っていることがわかる。
「大切なもの………ですか」
 脳裏に親友の顔が浮かぶ。
大切なもの、守りたいもの。
今まであたしを支えて、今のあたしをくれた大切な友人。
「うん」
 フェイトさんはひとつ頷くと、最近の激務の所為か疲労が見え隠れするまま訥々と続ける。
「もし、その大切なものに手が届かなかったら、触れられないと知ったとき、ティアナはどうするかな」
「……………ぇ」
 守りたいものが、守れないと知った時。守れなかったと知った時。
信じていた物が裏切られた時。
言葉が出なかった。考えもしなかったからだ。
あたし達は信じたものへ向かい、自分の道を歩んでいる。
もし、その途中でどちらかが足を止めたなら。止めざるを得なかったなら。
あたしに何ができるだろう。
「…………わかりません」
 あたしはそう応えるしかなかった。自分の甘さが身に染みた。
そうだ、なのはさんが墜ちたようにあたしたちも堕ちないとは限らない。だからこそ、なのはさんがあたし達を鍛え抜いてくれた。それでも、どうしようもない時が、あるのだ。
「わかりませんけど………あたしは」
 兄が墜ちた時、まだ小さかったあたしにはどうしようもなかった。
「立ち止まると思います。目的を、見失ってしまうかもしれません」
だから、強くなろうと決めた。だから
「それでも、あたしはここにいいたいと思います」
 何を失っても、同じ人を増やさないために戦い続けたい。
「ティアナは、強いね」
「え?」
 不意にでたフェイトさんの言葉に思わず読めないその顔を凝視してしまった。
徐々に光が失われ、暗赤色に染まる部屋にフェイトさんから色濃い憔悴が漂っていた。
「私は、その弱さを認めるのにすごく、時間が掛かった。認めたく、なかったんだ」
 初めて見る上司の姿に、あたしは驚いた。
彼女はいつも、いつだって迷わず、強くあるものと思っていた。
「弱さを認めなかったから、強くなろうなんて、思わなかった。だからいつも、大丈夫だって、自分に言い聞かせていたんだ」
 それは弱さからくる逃げの行為だ。現実から目を背けて、逃げ出した。
フェイトさんはそう続けると、重たげに背もたれへ身を預けた。
その閉じられた瞼の裏に浮かぶのは、一体誰の姿だろうか。
「ティアナは、多分私のことを『強い人』だと思ってるみたいだけど、そうじゃないんだ。私だって今になってもまだ迷うことがある。人はいつも、悩まずにはいられないんだ」
 思っていたことを指摘され、頬が熱くなった。
なのはさんも、フェイトさんも、はやてさんだって、一人の人間なのに。
六課にいた頃、アコース査察官に言われた言葉が甦る。
 そんなあたしをみて、フェイトさんは小さく笑う。
「ごめんね、急にこんな話をして」
「い、いえ。そんな」
 忘れてしまっていたことが恥ずかしくなった。
「ティアナもこの先、迷うこともあるかもしれない。悩むこともあるかも知れない。
だけど、迷って。悩むだけ悩んだらきっと正しい道を選んでくれると信じてる。
だから、迷うことを躊躇わないで。無理に強くあろうとする必要は無いんだから。
その時、傍にいられるか分からないから、私に言えるのはそれくらいかな」
迷わずに進めればそれに越したことは無いのかも知れない。
だけど、悩めば悩んだ分だけ確かな物が見えて来る。
あたしをまっすぐに見るフェイトさんの顔は、優し気に微笑んでるように感じた。




「たっだいま帰りました~。シャリオ・フィニーノでーす」

 そんな人懐っこい声が執務室に木霊したのはそれから三日後のこと。
はきはきとしているものの、その動作に何処となく滲みだす疲れを見逃さなかった。
「お疲れ様です」
「うん、ティアナも私がいない間仕事まかせちゃってごめんね」
「いえ」
  シャーリーさんは優しい。
疲れているのに笑顔を絶やさない人だ。あたしもそんな姿を見習いたいと思う。
フェイトさんが「おかえり、シャーリー」と労うように微笑んだ。
「はい!」
 元気よく頷き、空席だったままの補佐の席へ着く。元通りの光景。
目指すべきものはまだ遠いけれど、目指すべき人たちがこうして近くにいる。
そんな人たちをあたしは誇りに思い、そして、いつか誇ってもらえるように。
あたしは未来へ進んで行く。

こうして執務室はいつもの平穏へと戻って行った。
 



*             *             *




 「それじゃ、お先に失礼します」
 ティアナが礼儀正しく一礼してから執務室を後にした。
二人取り残された部屋に、沈黙がおりる。

「シャーリー、首尾は?」

 その沈黙を震わせ、口火を切るようにシャーリーに尋ねる。
私の問いにシャーリーは「ばっちりです」と頼もしく応えた。
「今は地上本部隊だったかな、様子は?」
「勤務中は傍目には通常と変わりませんが、それ以外の時は……」
「………そう」
 椅子の背もたれに身を沈める。
女性執務官はその過激な任務柄、少ない。シャリオや現役時代のエイミィのように士官学校で始めからバックアップを旨とする事柄を学び、補佐に落ち着くことが多い。
この椅子は執務室と同様、執務官に与えられる支給品なのだが地位の所為か座り心地が良い。
ただ、男性用のサイズということでいくらか大きすぎるのだ。
最近ではティアナのように女性でも武装隊や執務官を目指すものも増えている。
そろそろ女性用の椅子を申請しても良いかも知れない。
「まだ、時間が掛かりそうかな」
「そうみたいですね」
「例の物は」
「これです」
 シャーリーが待ってましたと後ろ手に回していた手を差し出した。
その手にあったのは少し厚めの茶封筒。
「………ありがとう、シャーリー」
「いえいえ。それじゃ、私もこれで失礼しますね」
 そういうとシャーリーはあっという間に執務室を去って行った。
気を遣わせてしまったかな、とシャーリーに心の中で手を合わせた。
シャーリーにはいつも助けてもらってばかりだ。
私は封筒の封を開け、中の物を取り出した。














『週間 The WorKs 職場密着型情報誌。
時空管理局特集号・武装隊編
戦技教導官 高町一等空尉にインタビュー!』




「なのはぁ」
 表紙を飾るなのはの満面の笑顔に思わず溜め息が出る。溜め息が桃色に染まる。
禁断症状で冷や汗が伝いシャツが張り付いた背中に初めて血が通った気がした。
写真なのにいつも見ていた筈の笑顔が百倍も輝いて見える。
余りの可愛さに目眩がしました。もう可愛すぎます。
 巷で話題のこの情報誌は就職活動や転職を考える者たちに、事務的な紹介文では分からない生の職場環境を伝えると云うことを旨としていた。
けれど実際には、アイドルや作家など話題の人物のインタビューという形をとったエッセイ集、写真集としての評価が高かった。
編集部もそれを察したのか、最近は専らムーブメントな華やかな人物に迫るということを繰り返し、結果売り上げは上々、憧れを抱く若い世代から実際に他の職場に興味を抱く中高年にまで幅広く知られるようになった。
これは管理局が念のため校閲していた一般にはまだどこにも出回っていない発売前の貴重なもの。
これを数多といる高町教導官ファンの手をかいくぐり、シャリオが手回しに奔走し漸く手に入れたものだった。



 二週間前のことだ。
荒れ狂う波の如き襲い来る激務という名の高波に晒され翻弄された私は一滴のオアシスを求める為に別世界から用件があって戻った本局で少し寄り道をした。
そう、私の輝く女神の元へだ。
しかし現実の斯くも無慈悲なことだろう。
一目だけでもと向かった先で、彼女はあらぬことをその柔らかな舌に言の葉として乗せたのだ。

怒濤の中では、一滴のオアシスなんて当たり前のようにあるわけが無いことを知った。
絶望した。
ちょっと涙がでた。
あまりに愕然とした私は気がつくと静止の声も振り切りその場から逃げ出していた。
慟哭の嘶きに胸が軋みをあげた。
あろうことか、彼女は「勤務中なんだから、ちゃんとお仕事しないとだめだよ」と私の脳髄を溶かす世にも愛らしい声で死刑宣告が如き言葉を下したのだ。
普段ならこれ程までに衝撃を受ける言葉ではなかったが、なのは禁断症状を発症していた私にそれはまるでなのはが手を下さんと死神の鎌(RH)を振り下ろすが如し。
確かに私も私用で会うのは躊躇いがあったが、少しの立ち話は許容範囲内だと思った。
仮令、用があった本局内の施設となのはのいた施設が街のひとつやふたつは軽く呑み込めるほど広い本局内の端と端というほどに遠くとも。
ああ、思い出すだけでも私の心は最愛の妻の不貞を知らされたオセローのようにざわめきだす!
嘘だ、嘘だと言ってくれ、おおニーチェ!
悪とは何か、それは弱さから生ずるすべてのもの。
これは私の弱さが産んだ天罰なのでしょうか。何のメタファーでしょうか。
走り疲れ、憔悴しきった私はとぼとぼと職場へ戻り、それから一週間が過ぎ、二週間が過ぎた。
そこに待っていたのは、なのはと会え無いどころかメールや通信も出来ない、想像を絶するほどの地獄だった。



 そっと目を開けると追想からゆっくりと身を起こす。
余りに大きな感情の奔流に我を失っていたらしい。
地獄の末、果ては勤務中にはあるはずのないなのはの声を聞いたりなのはと一緒にいる幸せな白昼夢を見るにまで到り、とうとう胃に穴が空きそうにもなったがそれはもう昔の話。
今の私には、奇跡のバイブルがあるのだ。
目の前の表紙を再度一頻り見詰めた後、震える指でそっとページをめくる。
それは私の心の空白を少しだけ埋めてくれた。


どうしてかなぁ、なのはの写真がぼやけてみえるよ……






後日談

 残業中のフェイトの元になのはからのメールが届き、それを一読したフェイトは交通規制ギリギリの速度で愛車を飛ばし、自宅へ帰るなりなのはをベッドに引きずり込ry
夫婦仲は今日も安泰です。






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