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浸水    2008 / 02 / 11 ( Mon )
引越しに伴いHDDから未完ものサルベージ。


マリみてから。聖蓉。


 抱きしめた体は汗ばんでいたけれど、肌はさらさらと心地良く。
このまま何処までも墜ちていける気がした。
蝉の音が耳にこびり付く。
 




 「紅茶で良いかしら」
 細身の部屋着を着こなした友人は、いつかの見慣れた制服姿よりもずっと大人びて見えた。立ち上るその色香がこちらまで香る前に、戯けたように眉を上げて「蓉子の紅茶何て久しぶりだわ」と口元を歪めて笑ってみせた。




 この部屋へ最後に来たのは何時の頃だろうか。
あの頃と変わらない友人の質素な部屋。
少しだけ増えた小物やCD、本棚の背表紙はきっと会わなかった間だけ増えた友人の新しい時間。
間違い探しをするように見渡していた部屋の端に変わらない色のベッドシーツを見つけ、冷えた手が肌を直になぞるような心地がした。目を遣るとあぐらをかいた足下が水に浸りはじめたことに気付く。
耳元で蓉子の声が私を呼ぶ。


「聖?」


 声に振り向けば、瀟洒なポットとティーカップを持った蓉子が半開きのドアの前に立っていた。
冷水に背を凍らせながら、呼吸が出来ることに安堵した。
「待ちくたびれた」
 口の端を吊り上げてみせると蓉子は「まだ二分も経ってない筈よ」と苦笑しながら、目の前のローテーブルにティーセットを並べて行く。
最後に私の前の受け皿にカップをかちゃりと置くと、丁度葉のひらいた頃合いらしい紅茶を、カップに傾けて行く。
既に肘の辺りまで浸かっていた腕を冷水から引き抜くと鈍い痛みが広がるばかりで感覚が無い。最初は透明だと思っていた水は、小さく波紋を広げながら曇天のように薄く濁っていた。
 夫々に注ぎ終わったのを見届けると、待ちかねたように手を伸ばす。蓉子のいれてくれた紅茶は暖かく、カップを掴んだ指先にじんわりと血の通う心地がした。
呟くと、それが聞こえたらしい蓉子はアイスティーの方が良かったかしらと窓の外へ目を向けた。
耳に纏わり付く晴れた日の驟雨のような蝉の声。
つられて見た外界の未だ強い日差しは、照り返す白さと墨を流したかのような黒々とした陰影のコントラストを克明に目に焼き付ける。
「冷たいものばかりでも体に悪いでしょ」
 目を細めたまま、網膜に焼き付ける日差しを見詰めた。
水嵩が増したのかカーペットに座り込んでいた下半身が全て鈍色に覆われ、冷えきった筋肉は張りつめて強張っている。
堪らず流し込んだ紅茶は体の芯を痺れさせたが、凍えた体には熱いのか冷たいのか判別が付かなかった。
「もう三年も経つのね」
 時折呼び出し合ったり母校の学園祭に行ったりと、あの箱庭から一足先に出た彼女と会う機会は多かった筈が、この部屋には決して踏み入れることは無かった。
「まだ三年じゃない」
 ぞわりぞわりと肌を撫で上げる水の放つ冷気に耐えきれず、もう一度カップを煽るが一滴も喉元に落ちては来ない。
見れば乾いたカップの底で、歪んだ自分の顔が見返している。
(何をそんなに焦っているの?)
カップの底から問いかけられる。
そんなことは無い。私は何時だって冷静だよ。
(本当に?)
片手だけ繋いで、二人外へ目を向けたから。
広い世界を知ったから。
狭い世界で窒息することなんて恐れちゃいないさ。
(それならその水はなんなの?)
気の迷いって奴だよ。
空のカップをテーブルに戻そうと後ろ手をついていた姿勢を正すが、既に受け皿の上には水が張っており、二の腕近くまで沈んでいた。
濁った水に阻まれ、もう自分の足すら見えない。
「あら、もう空になったの?」
 空のカップを手持ち無沙汰にしていると、蓉子は不思議そうに瞬いてみせた。
「やっぱり冷えた方が良かったかしら」
「これでいいよ。おかわり頂くわ」
 空いている手を水面から引き抜くと、白い水飛沫が立った。
淀んだ水に波紋が目立つ。
かろうじで注ぎ口まで水が至っていないことを見て取りながら、ポットへ手を伸ばし、カップへと傾ける。と、陶器の柄が手から滑り、ごつんと鈍く音を立て

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