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一睡    2008 / 02 / 11 ( Mon )
R-15

双子。

   一睡 (いっすい)《名詞》ひとねむり。僅かばかりの睡眠。



 暑い時期が近づくと、じりじりと響く虫の鳴らす音。
その虫が蝉という名を持つ事を知るのはあれから4年後の事。


 白々とした日差しに晒されあの虫は今日も哭いている。
 障子に切り取られた白く皓々とした庭先の向こう側と対を為すよ
うに暗く翳った部屋の中は変わらず暑かったけれど薄暗い天井を見
上げていると底冷えするような錯覚に襲われた。
 背に広がる畳の感触に身を沈めるように瞼を落とす。
 相変わらず眼には濁った闇が広がるばかりで、きっと私はこうし
て溶けていくのだろうと音には出さず呟いた。
気怠く腕を持ち上げ、直ぐそこに熱を持った塊を見つける。触れた
その瞬間に其れは直ぐさま私の手を握り返し私の手は更なる熱を帯
びる。反射鏡のように要求に応じる。其れが通常の人間関係に於い
て成り立たないという事を知るのはそれから3年後。
 頭を傾け瞼を開く。そこにあるのは鏡を覗いたかのように同じ顔。
 私にはそれしか居なかった。


 二卵性双生児であると知るのは2年後。
 私は其れまで、それが私の一部であると信じていた。思えばあれは
信じるまでもなく私だった。
此の身体が五体満足であるように。
然程の意思を必要とせずとも
此の手が何かを握りしめるように。


 其れを知ったのは其の夏の終わり頃。
 晩夏の斜陽に目を細め噎せ返るような残暑の湿気と熱に体を弛緩さ
せていたその時に、不意にそれの腕が絡めるように私の身体に触れ、
其れは足の付け根にまで及んだ。
其の後の記憶は曖昧に斜陽の紅さに滲んでしまったかの様に思う。只
頭が恍惚としたのを覚えている。
それから私は事ある毎に互い違いに身体に触れ合い関わらず其れは手
淫と何ら変わりなく、まるで白昼夢のように非現実性を伴い其れは現
を勾引す。
 その年も又庭の木に紅い華が灯った。
 驟雨に濡れると其の香が一層濃く薫り、酩酊するようにじっと眺め
た。
 その華が百日紅と呼ばれる事を知るのは其の1年後。
 
      * 

 ふと眼を開けるとそこには見慣れた天井が黒く沈んでいた。
所々に剥き出しの梁は木造ならではの物だが知識として持つのは此の
古びた天井のみであった。
 外は未だ渺茫とした夜闇が馳せ、眼に映る物は打ち沈むように仄暗
い。其の闇をかき乱すように吐いた息はただ吸い込まれるばかりで、
自らが打ち沈むような気さえする程、其れは暗澹と其処にある。
 外に出ようと思い立ち、重い重い身体を起こすと体中が汗ばみ服が
張り付いている事を自覚させられ不快げに眉をひそめた。
 折も折手が何かに触れる。何かなんて考えるまでもなかったのだが
意識する事も無く惰性的にそちらへと目を向ける。
 近頃、日に焼けた畳の上に転がるそれを見遣ると不思議な気持ちになる
回数が増えた。何と形容すべきだろうか。其れを為す其の術を持ち得
ないのは既に既知の領域である。
 

 目を閉じると涼風の感触がより鋭敏に肌を撫でた。
 素足で降りたその庭には、一本の百日紅が其の存在を誇示する事も
無く寂しげに立っている。背を預けた細身の幹の滑らかな木肌がより
冷たく思え、瞼の裏に連なる闇がより涼やかに見下ろしている。
 庭に降りた時垣間見た月が振り子を連想させたのだろうか。
大部屋に置かれた古めかしい大時計が脳裏へと浮上する。
 かちりかちりと心地よい音が頭蓋腔内に反響し、刻一刻と思考を侵
す。ゆらゆらと揺れる鈍く輝く金属の振り子は一度目に留めると暫く
視界から引き離す事が出来ない。其れは宛ら魔術のように目を、結膜
を、角膜を、前眼房を、瞳孔を、水晶体を、硝子体を、網膜を、脈絡
膜を、強膜を、視神経全てを侵し犯し魅する。
 余りにも見つめすぎて空気と、空気を震わせる時計と一体となった
かのように思う事が間々ある。しかし瞼を瞬けば変わらず肉体は其処
にあり、其の輪郭は滲み歪む事も無く此の手も腕も何一つとして時を
刻むよう機能しない。
 其の時私は悲しかったのでしょうか。
 自らの感情に抗う術のみしか有さない無力極まり無い此の矮驅が時
にどうしようも無く憎らしい。
 頭の中の時計がかちりかちりと反響し、刻一刻と思考を侵す。
 ゆらゆらと揺れる光沢を放つ振り子はただ愚直に時を刻みかちりか
ちりと切り分け、時は連なり螺旋のように延々と紡がれぐるぐると渦
を巻き爛々と輝く天井へ向かって暗鬱に広がる底へ向かって黙々と
淡々と上へ上へと或は下へ下へと歩き又は走り又は這い又は駆け又は
翔ける。いつか読んだ本に記憶という物はゆるやかな螺旋模様を描い
ているという記述があった。目に浮かぶかの様に其れは明確に連なり
螺旋の様に延々と紡がれぐるぐると渦を巻き爛々と輝く天井へ向かっ
て或は暗鬱に広がる底へ向かって時は止まる事も無く留まる事も無く
終わる事も無くかちりかちりと時を刻み幾何学的とも言える装飾のあ
しらわれた時計は其れは宛ら魔術のように
  かちりかちりかちり
 時計が3秒を刻むのを待ち、目を開いた。其処には丁度襖を開いた
姿勢でそれが居た。
 それは靴も履かずに縁側から飛び石を渡り、其の足下には零れるよ
うな花がぽとりぽとりと堕ちており其れは今にも綻びそうで。自然と
避けるような足取りで、私の凭れ掛かる百日紅の木の元へと舞降た。
 鏡のように向き合い息を殺す様に見詰め合う。何気なく伸ばした手
はまるで糸をたぐり寄せたかの様にまるで鏡を覗くかのように同様に
伸ばされた手に触れ絡み合い其れは連鎖的に全身へと及び、雲の切間
より覗く月に肌は淡く光る。思うより長く外に居たのだろうか。汗に
湿るそれの肌の熱が接触部から乾いた肌へ其の温度差を訴える。
 白いワンピースを捲り上げ、下着の中を弄り其の場所を探り当てる
までの所要時間は約3秒。もう何度目になるのかなど指折り数える事
等最初からする気はなく、故にその回数を知ることはない。其れでも、
両の手の指を超える数字を費やすことは自明の理であることに変わり
はない。
 ぬめりと滑る生暖かい其処に指を埋めると吸い付くように其れは迫
り筋肉の細やかな伸縮が指の感覚神経を覆った。
 さしずめ其れはえぐるように指は互いに秘肉を乱し下露の如く膣内
から掻き出された白帯下が刹那に粘性を忘れたかのようにぽたりと庭
土を黒く染めた。それの肩が鎖骨の辺りに凭れ掛かり耳元で浅く息を
つく。
 夜風に混ざり熱を孕んだ吐息は心地よく首筋を撫で上げ、背後の闇
へ霧散してゆく。脊髄から脳に架けてじりじりと灼けるように痺れ、
恍惚とした音がか細く声帯を震わせた。
 
  *

 呼び鈴が聞こえた。
 其の音が呼び鈴であるということと其の用途を知らず、反応に時間
を要し其の間に隣で惰眠にうつうつとしていたそれがのろりと体を起
こす。
以前、郵便受けの脇にあった其れを徒に押した時のことを覚えていた
のだろうか。其の足は、確かに玄関の方へ向かっていた。
 最初、単に風に舞ったものが当たっただけかと思っていた。しかし
それを追って玄関先へ出ると戸口には黒いものが屹立していた。
上背のある黒いものは其の頭に乗せていた帽子を取ると、音も無く頭
を下げた。
 其の口元が、上弦の月の様に歪んだ。
 黒いものは靴を脱ぐと家へ上がり、床や壁をきしりと軋ませた。
 此の家が、俗世から隔絶されていた事を突き付けられたのは恐らく
この日。黒いものは上顎と下顎が強い粘性で引き付けられているかの
様に、絶え間なく開閉し私は其れを眺めた。
(カット黒いものは月の最後の日に一日だけ訪れ、紙の束を置いていった。
最初は薄い小冊子のようなもの。それから徐々に厚みと幅を増した。
 それらは、項を繰ると例外無く文字に埋没しており、文字や言葉を
排他して久しい目には理解不能のものとして写る。黒いものは其れを
好ましく思わず、退化した脳に教え込もうと詳らかに言の葉を紡だ。
其れが実を結ぶのは、それから1年後。)
    
      *

「私、未だあなたの名前、呼んだことが無かった。」
 私は眺めていた紙面から顔を上げた。
「いつか、会ったときに呼ぶことにする。」
 彼女は、僅かに顔が綻んでいることに気付いているのだろうか。
 ここが廃村であると知るのは其の会話の残滓が未だ薫る、変わらぬ
風景の中での出来事。
 里親が決まったのは6年前。私たちはそれぞれの親に手を引かれ、そ
れぞれの道へと歩を進めた。 

 その年も又庭の木に紅い華が灯った。
 霖雨に濡れると其の香が一層濃く薫り、其れは断末魔の様に鼻孔か
ら脳にこびり付く。霏々と枯れ堕ちる赤い紅の差す今にも零れそうな
其の華は雨露に濡れそぼり、髪から淋漓と滴る雫に一度だけ弛んだ。
 その華が百日紅と呼ばれる事を知るのは

      *
 
 頭が思いのほか重力を有していた事に気付くまで半瞬。
 座席の上で寝ていたつけが身体の節々から悲鳴となって襲った。
 何時の間に寝てしまっていたのだろうか。沙夜が首をまわすと窓の
外の流れ通り過ぎる町並みが目に映り込んむ。がたんがたんと音を立
て、電車は朝の茫洋とした光を湛え軒先を泳ぎゆく。其処に人の姿は
無く、何処か夢の続きのように思えた。
 ふと沙夜は夢の後を辿ろうとして、其れが思い出せない事に気付く。
然程の落胆は無かった。沙夜はその懐かしさの香る残滓に意識をゆだねた。 
 
 駅から出ると、もう大分辺りは明るくなっていた。
 見渡せば三々五々に連れ立つ人が目につく。沙夜は上着のポケット
から折り畳まれた紙を取り出し,もう既に何度も目を通し暗唱している
けれど儀式のように其れを広げた。
 目にしたものは一字一句変わること無く其処に羅列し、手の中に逃
げること無く収まっている。
其れを再びポケットに仕舞い込むと、朝靄に紛れるように足を進め
た。石畳の模様が地を蹴る度に、後ろへ後ろへと送られる。
 
 彼女は起きているだろうか、旅行中ならばどうしたものか。
 それでも前もって知らせるという考えは浮かばなかった。
 恐らく、不在であったとしても沙夜は驚かない。只事実を認める。
 朝の風と光を孕んだ此の空気が愛おしい。
 その心地よさに走り出し、叫びたい気分になった。
 何を叫ぼう?何でも良い。でも何が良いだろう?
 走り出した時と倣うように、唐突に足を止めた。
 其の先には鏡を覗いたかの様に同じ顔、同じ姿。
 叫ぶ言葉は決まった。
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